羽野医療・相続
コンサルタント事務所

家族信託について

お役立ち情報は、士業が行う場合の一般的な手続きを参考にお示ししたものです。

家族信託とは? どんな人が家族信託をするとよいですか? メリットと注意点は?

認知症になると、不動産や預貯金等の資産が凍結され、財産管理ができなくなってしまいます。家族信託とは、委託者(財産を託す人)が不動産や預貯金などの財産管理を受託者(信託財産を預かり自分の財産と分別して、信託事務をする人)に託し、受託者が受益者(信託財産から給付を受ける人)に不動産の賃料収入など、預かった財産から発生した収益を渡すしくみです。

【メリット】

  1. 家族信託で本人(老親など)の体調・判断能力に左右されない財産の管理処分が実現できる。
  2. 家族信託で成年後見制度の代用としての柔軟な財産管理が実行できる。
  3. 家族信託で(遺言の機能+受遺者の財産管理)が実現できる。
  4. 家族信託で自分の思いどおりの資産承継の道筋が実現できる。
  5. 家族信託で不動産の共有回避や共有不動産の塩漬け予防が実現できる。

活用例 認知症対策 〜自宅を売却して施設の入居金に充てたい〜

相談内容
相談者は83歳の男性。妻は亡くなり子供が1人おり現在は自宅で1人暮らし。将来の生活が不安なので一人で生活できなくなったら施設に入居したい。その際、自宅を売却して施設の入居費用に充てたい。
問題点
  1. 認知症などで相談者が判断能力を失うと、自宅の売却ができなくなってしまう。
  2. 成年後見制度は不便なので、利用したくない。
  3. 元気なうちに子供へ不動産を生前贈与すると、多額の贈与税や不動産取得税がかかる。
メリット
  1. 相談者が認知症になった場合でも、成年後見人をつけずに自宅を売却することができる。
  2. 自宅の売却代金は施設の入居費用に充てるなど、子が管理処分をしていくことになる。
注意点
  1. 損益通算ができなくなるリスク
    信託不動産に関する損失は、信託財産以外からの所得と損益通算して課税対象の所得を減らすことができません。また、その損失の翌年への繰越しもできません。
  2. 家族信託でもできないことがある
    ・遺言でなければできないことがあります。信託財産から漏れる財産について遺産分割協議を排除するには、信託契約とは別に遺言書を作成し、主たる遺産以外のすべての遺産の承継先を指定しておく必要があります。
    ・身上監護は成年後見制度を利用する必要があります。
  3. 税務申告の手間が増す
    年間3万円以上の収入がある場合は、前年分の信託計算書・信託計算書合計表を毎年1月31日までに税務署に提出しなければなりません。
    また、毎年の確定申告の際、信託財産から不動産所得がある方は、不動産所得用の明細書の他に信託財産に関する明細書を別に作成して添付しなければなりません。
  4. 長期に亘り当事者を拘束する
解決策イメージ

家族信託の手続きは? お金(費用)がかかるの?

  1. 家族信託導入となると、まず家族会議で十分話し合うことが大切です。家族全員が理解したら、1.家族信託の設計、2.家族信託契約公正証書の作成、3.信託開始のための手続きの3工程となり、すべての手続きが完了するまで一般的には3か月ほどかかります。委託者と受託者が公証役場へ行き、印鑑を押す必要があります。
  2. 信託開始のための手続きは、信託口座の開設(自宅不動産の場合は委託者の口座のままでもよいが、収益物件の場合)が必要です。
    (1)金融資産の場合:
    1.銀行と調整して「委託者〇〇 受託者〇〇信託口」という信託専用の口座が必要です。
    そのほか、2.生活費等の引落口座変更、3.株主名簿の書き換えが必要な場合があります。

    (2)不動産の場合:
    1.各種名義変更手続き
    イ)固定資産税の支払先口座の変更
    ロ)損害保険(火災保険、地震保険)の変更
    ハ)賃貸人のオーナーの変更通知、賃料振込口座の変更(マンション、管理会社、賃借人)
    2.登記簿の変更 「委託者〇〇」「受託者〇〇」「受益者〇〇」
  3. 家族信託のスタート時の費用:
    (1)登録免許税:
    1.「自益信託」と「他益信託」に登録免許税が課税
    2.不動産と金銭を併せて信託財産とした場合、不動産の所有権移転登記申請時のみ課税。金銭と株式は非課税。
    3.土地、建物の固定資産税評価額×0.4%
    (2)不動産取得税:
    1.不動産の所有権移転時に非課税。家族信託でなければ、固定資産税評価額×4%(R6年3月31日までに取得の住宅土地3%に軽減)課税